えぬようでございました。ただ夢中で一方を指さしますのでその方を見ますと、さつきの薬の袋が破つてあり、中のパラフイン紙に包んであつた粉薬をのんだらしくその包紙がすててありました。早速木沢先生に来て頂いていろいろ注射などして頂きましたけれども、御承知の通り甲斐がなかつたわけでございます」
 彼女がここまで語つて来た時、今までどこに行つていたか高橋警部が、不意にドアをあけて部屋にはいつて来た。それを見ると検事は、
「ではさだ子さん、今日はこれ位にしておきましよう。またききたい所があつたら後でよびますから」
 といつてさだ子にもう去つていいという合図をした。

      9

 さだ子が書斎から姿を消すと同時に、検事は警部に向つて云つた。
「高橋君、どうだつたい。矢張り同じ事かね」
「はあ、今度は主人が帰つていましたから、直接主人について充分取り調べて来ました。しかし、どうも西郷薬局の方には間違いはないようです。警察の野原医師もそれから、この家のかかりつけの木沢[#「木沢」は底本では「野沢」]医師も同行して専門の方の調査をしていましたが、やはり向うでは間違いは起つていないようですよ。
 さつ
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