た。それは映画俳優にでもありそうな立派な男で、年は二十七八にもなろうか。
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私はこの若者の立派さに驚いたけれども、同時に、いつたい此の伊達という男は、秋川家とどういう関係になつているのかしらといぶからざるを得なかつた。
こうして秋川一家の人々と一間に並んでいるところを見ると、少くともこの家で客としての待遇を受けている人にちがいない。
こういう学生がここに住んでいるときいていなかつたが……ははあ、判つた、ひろ子の婚約者ででもあるのかな!
私がこんな事を考えながら、一応のくやみを述べている所へ、高橋警部がはいつて来た。
「あちらで一通り検屍も終りましたから、秋川さん、ちよつと来て下さい。検事がお目にかかり度いといつておられます」
予期したものの如くに秋川駿三は、立ち上つた。
「はあ、ではすぐにまいります。私の書斎でお目にかかります……オイやすや、皆さんを書斎にお通ししてくれ」
こう云つて彼は私の側を通つて座敷から出て行つた。丁度それと入れ違いに藤枝が廊下にあらわれ、室内の人々にちよつとあいさつをすると私を招くので、私は直ぐ立ち上つた。
「ここの主人の取調べがあ
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