。今さら用もないのにこれをあばく必要はあるまい。そこで駿三という男はまた大体こうした男だつたんだね。一言で云えば社会的には立派な一人前の男だつた。しかし家庭の人としては全く成つていなかつたんだ、といえる。
「さて、こういう駿三が陽気な家庭を作れないということは明らかなことだ。さだ子を自分の家に入れた時、伊達正男を養育しはじめた時、必ずや夫人との間にトラブルがあつたにちがいない。もつとも、伊達正男を養育するについては無論事の真相は徳子にはいわなかつたろうが、さだ子の場合には多分事実をばらしたろう。こうやつて表向きは立派だが、駿三の家は、内面的には極めて暗い、じめじめした家庭を作つていたわけなのだ。
「駿三は、しかし過去のあの秘密におびやかされつづけて段々衰えて来た。ことに、脅迫状を受け取つてからは一層それがひどくなつてついには職を抛つようにさえなつた。ところで一番賢明で元気だつたひろ子が、家庭の秘密を嗅ぎ出したのだ。彼女は、かねてからクリミノロギーや探偵小説に興味をもつていた。自分の家の状態を考えてから彼女は今までの趣味をそのまま実地に応用して考えはじめたのだ。今までの蘊蓄を傾けて、自分
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