ンスだ、いやノンセンスじやない、という問題は、林田自身のことだつたのかね。僕は又伊達のことかと思つたんだが」
「そんなことはない。年を数えて見たまえ。そんなことがあり得るはずがないじやないか。正男の生れた頃には、駿三は未だ山口県にはいなかつた筈だよ」
「ふうん、成程。では林田は、君の言葉をきいて、はじめて自分の錯誤に気がついたのだろうか」
 藤枝はニヤリと笑つて私の顔をながめた。
「ねえ君、君はあの時僕がいつたことを、事実だと信じているのかい」
「だつて君は非常な自信をもつて林田にくつてかかつていたじやないか」
「しかし、あれには何の証拠もないんだよ」
 私はしばらく言葉もなかつた。
 ようやく私はいつた。
「じや、まるで君の空想なのかい。林田がいつた通り?」

      8

「空想?――空想と云えば空想かも知れない。しかし、空想が真理を云い当てていないと誰が断言できるか。僕には、あの方がほんとうだつたのじやないか、とも思われるね。証拠なんてものはつまらぬものさ。法律家が事件を裁く時に必要なものだ、議論の相手を屈伏させる時にのみ必要なものだ。それがはたして真理にあてはまつているかど
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