に危険な状態に陷るとすれば、彼女は必ず黙視してはおられない。少くも自分が脅迫状を送つた、という事実を云わなければ伊達正男の身がいよいよ危い。だからもしこの女が死んだか、大病でない限りどうしても自分から名乗り出るだろう、とこう思いついたのだよ。それで窮余の一策として、君も御承知の通り、いつもの例に似合わずわざと新聞記者をあつめて、しやべりちらしたのだ。まさか伊達が殺人の自白をした、とはつきり僕は云わなかつたけれど、暗にそれを匂わしたんだ。新聞記者なんてものはひどく敏感でツーと云えばカーだからね。その結果、警部が立腹して僕をなじりたくなるような記事が出たんだ」
「ふん。成程。君はしかし、昨日、もう暫く待つてくれ、と云つたけれども、午後にはあの女がとび込んで来ると当りをつけたのかい」
「無論、時間なんか判らぬ。しかし今までの怪しい電話から考えて、女が東京市の内外にともかくいることが判つている。そうすれば、おそくも昨日のひるすぎには、狼狽してとび出して来ると信じていたのだ。この見込みは、正に当つて君も知つている通り、里村千代は姿を現した。しかし、残念なことに林田に対決させるひまもなく、自殺して
前へ 次へ
全566ページ中546ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング