うとあせつてわざと伊達のことや早川のことをさだ子に告げなかつたのだが、あれはあの際極めて不自然に見えるじやないか。僕が林田を疑つた理由の一つにもなるものだ。ただ僕は女の直観というものをほんとうに見せつけられて驚嘆したんだよ。見給え。ひろ子は何の証拠もないのに伊達の父母は自分の父母の仇だと断じたではないか。しかも父の罪亡ぼしまでに言及している。僕は全くおどろいたよ」
 私はこの時、藤枝がひろ子のあの説をきいて二度シガレットを床に落す位おどろいたのを思い出したのである。(ひろ子の推理第七回参照)
「うん、そうそう、君は驚嘆の余り二度もシガレットをおとしたぜ。殊に二度目には口にくわえていた奴を床に落しちまつたんだぜ」
「あの時は全くおどろいたんだ。彼女の Intuition に感じたのだが、二度目に僕がそんな醜態を演じたとすればそれは驚きではない。あれこそ全く Inspiration の為なんだ」
「何。インスピレーション」
「しかり、正に神の啓示! 僕はあのひろ子の断言をきいた途端、林田のことを考えたんだ。と同時に、こりや林田の父母が秋川家の仇じやないのかな[#「こりや林田の父母が秋川家の
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