仇じやないのかな」に傍点]、と心に思つたんだよ。そこで旅行は一刻ものばせぬ急務となつた。その留守をどうするか。僕の留守がかなり心配なのさ。
6
「しかし、僕が旅行のできない程心配ではなかつたんだ。この理窟が判るかい」
「さつぱり判らないな」
「相手が林田だからだよ。さつき警察ではちよつと云いにくかつたがね、林田は検事や警部なんか眼中においていないんだぜ。彼が好敵手と見ているのは、藤枝真太郎[#「真太郎」は底本では「信太郎」]一人だけなんだ。彼は僕の目の前で殺人をやろうという気なのだ。従つて僕の旅行の留守に殺人をやる気にはおそらくなるまいと思つたのだが、果してその通りだつた。それにしてもこの安心は絶対的のものではない。どうしようかと思つている所に警部がひろ子を疑つていることが判つた。これで僕はひろ子一人は大丈夫保護してもらえると思つたんだよ。君は僕が警部に彼の説の欠陷にもかかわらず大いにけしかけたのをひどく恨んでいるようだけれども、あれには深い仔細がある。もし警部がひろ子を拘留してしまつたらどうだい。さすがの林田もあの女には手を出せないじやないか」
成程、これではじめて
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