考えたんだ。しかし、彼に何の力があつてやす[#「やす」に傍点]を沈黙せしめていたかということが判らぬ、結局これは出来ないことだという結論を得たんだ。のみならず、彼にレコードのトリックが思いつくか。あの時あのトリックを思いつき得る人間は、ひろ子か、林田か、僕自身なのだ。そこで僕はひろ子伊達共犯説をちよつと考えて見たのだがこれは後になつてそうでないことが判つた。(あらしの前第三回及び警部の論理第七回参照)こうやつて考えて行くと結局あとには林田という人間が一人残る。彼には今あげた六つの条件は全部当てはまるのみならず、大変な事を一つ思い出したのだ。それは二十日の夜秋川邸を辞する時、彼がやはりスリッパのことを云つたというのさ、さつきも云つた通りあのスリッパの一件は僕は全くの偶然から発見したんだぜ、それを林田はどうして知つたろう。僕はここでいかなる天才犯人にも盲点ということのあるのに今更気がついたのだよ。彼は自分の頭から考えてウカとあの点が僕にも判つていると思いちがえてしまつたんだ。ちようど探偵小説の作家と同じだ、自分に全部の事実が判つているものだから、読者にももう判つていると思つて肝心の説明をと
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