全く二個のタイプライターを偶然使用したのだつたが、偶然にも僕の思いちがいは、かえつて発覚を早くしたのだ。僕は、一つの方を、はじめからの脅迫犯人のもの、他の一つを秋川徳子の殺害犯人のものと考えた。その時分は里村千代の事件なんか全く知らなかつたのだから、はじめのオフィスへ来た奴と五月一日云々のそれとは発信人が全くちがうと考えたんだが、今から思うとうまいスタートだつたよ。コナン・ドイルはかつてオスカー・スレーター事件を論じた説の中で『誤まれるスタートを切つた捜査が真犯人を捕え得るプロバビリティは殆どない』という事を主張しているが今度の事件はそのはなはだ少い例外の一つだつた。
「ところが僕らが迷宮に入つている所へ、四月二十日の事件が起つた。あの事件の直後、僕は次の確信を得たのだ。
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一、犯人は四月十七日の殺人犯人と同じだ。
二、犯人は男である。
三、犯人は佐田やすを生かしておいては危険だと感じたのだ。
四、犯人は駿太郎を誘い出し得る位よく顔を知つている男だ。
五、殺人直後に発見されても人から怪まれぬ条件をもつている人だ。
六、レコードのトリックから考え
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