第一回参照)では一体駿三は誰に殺されたか、曰く、伊達捷平の幽霊にだよ[#「伊達捷平の幽霊にだよ」に傍点]。君らはあの時駿三の心理状態をはつきり知つていなければいかんよ。秋川駿三は今君にも云つたように、自分の作つた三角形だけしか知らない。そこで自分は伊達一家に永久に恨まれていると考えている。里村千代の存在ははつきり知らない。林田は彼女をつきとめているけれど無論沈黙している。そこで彼はすまないすまないと思いながら伊達捷平の幽霊にばかり悩まされていたんだ。加うるに四月十七日以来ひきつづきおこる惨劇で神経は極度に鋭くなり、心臓も弱つていたんだ。ねえ木沢さん、そうでしよう」
「全くその通りです」
「彼が実に気の小さい正直者だということは判つているが、特にこれを証拠立てるのはあの鏡の中の遺書さ、僕はまさか彼自身あれを保存しておくとは思わなかつたよ。(第四の惨劇第八回参照)きつと伊達に見せるつもりで保存しておいたのだろうが、それにしても外に預けておけばいい。彼は、自分の家において、いつも自分の良心のいいわけをしていたんだろう。まつたく正直者さ。そこでそういう気持でいた彼が、二階から下りて来て、鏡の前
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