に立つた。あけようとする途端、鏡に伊達捷平がうつつたんだ」
「え? 伊達捷平が?」
 われわれは一度に驚きの声を発した。
「もつと正しく云えば、伊達捷平の幽霊が鏡の中にあらわれたんだよ」
 私には一体彼が何を云つてるのかわからなかつた。
「君らはあの日の天候をおぼえているだろう。それから、非常に暗かつたという伊達正男の供述を知つているだろうね」(第四の慘劇第三回、第八回及び最終の悲劇参照)

      5

「うん、よくおぼえているよ」
 と警部。
「それから、ちようどあの日の前後伊達正男が病床にいて、ひげもあたらず、ひどく老けて見えた事実を思い出すだろう、ねえ、これらの事実を思い出して綜合して見給え」
 しかし私にはまだ判らぬ。
「つまりこうさ、駿三が鏡の前でその戸をあけようとした途端に、伊達正男が窓から上半身をぬつと出したんだ。ちようどそれが、まつすぐ前の鏡にうつつた。あの日は暗くてはつきりものがうつらぬ。そこへもつて来て伊達がいつもよりずつとやつれてふけて見えたのだ。ねえ、伊達正男は誰かによく似ていたんだよ。判つたろう」
 そうか、では駿三はあの時、鏡にうつつた伊達正男の姿をチ
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