ちよつと黙つて茶をぐつと呑みほしたがすぐ続けてしやべりはじめた。
「さて次は五月一日の事件、第四の悲劇の説明に取りかかるはずなんだが、ここで僕は順序として何故林田があんな犯罪を行つたか。すなわち今回の連続した殺人の動機を説明しようと思う」
「そうそう、それだ。まずそれを充分に承りたいものだね」
 奥山検事が朝日をプカリプカリとふかしながら、勢いのいい声で云つた。
「恐ろしい運命のいたずらだ。宿命の三角形だ。幾世の前からさだめられた深刻な運命だ。と云えばいささか文学的になるが、科学的に説明すれば、僕らは今度の惨劇から遺伝というものの強さをしみじみと感じたのだよ。人間に自由意志なんてものはないよ。僕らはまさにデテルミニストに左袒しなければならぬ。シェークスピヤは人間に自由意志のないことをその戯曲で示した。わが大近松もまた……」
「というと、林田の父が犯罪者だつたとでもいうのかい」
 危く藤枝がまた脱線しかけたので検事が我慢しきれずに口を出した。
「そうではない。そんな意味ではない。被害者の側だよ。林田家対秋川家の問題なのさ。ねえ、僕らは秋川駿三という名を余りに考え過ぎていた。秋川駿三の血統
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