事がない。そこでそつと戸をあけて見ると、ヴェロナールは全く効力を表わして初江は湯につかつたままぐつすりと眠つている。まさにチャンスだ。無論林田がはいつて行こうが誰がはいつて行こうが全く気のつかぬ状態である。ここでわがジョセフ・スミス・メード・イン・ジャパンはあの The Counsel the Crown のボドキン氏の論告にあつた通りのまねをする。いきなり初江の両脚を両手で引上げたのだ。事は一瞬にして決した。(風呂場の花嫁第八回参照)彼はそれから何くわぬ顔をして二階に上り、さつき云つたようなことをさだ子にしやべつたという次第。それから、ひろ子が初江の死体を発見して大騒ぎとなつた。小川君と林田が風呂場に行く。小川君が僕に電話をかけている間に林田はヴェロナールのパラフィン紙をかくして、健胃剤を流してそのパラフィン紙を浴場でひろつたと称して警察に出し、初江の着衣の中から残りの健胃剤を探し出したということになる。どうだね。これで、第三回の悲劇の説明はついたつもりだが……」
藤枝はいささか得意の面持で一座を見渡した。
「ねえ君、あの日僕が君と一緒に君の家に行つたら『これで僕は今までの考え方を
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