り女性の心理利用だよ。林田はさだ子をさきに上らせると『おや、伊達君が戻つて来たようだ。僕会つて来ます。あなたは先へ行つてらつしやい』と云つたそうだ。そして六、七分たつと上つて来て『伊達が用もないのに廊下の所をブラブラしている。変な調子だつた』といぶかしげに語つたそうだ。で、あとで初江が死ぬと又々林田はさだ子に伊達を疑わせて沈黙させてしまつたのだ」
「ねえ藤枝君、君はしきりと女性心理云々というけれどね。伊達とさだ子は毎日会つてるんだぜ。さだ子だつて伊達を疑えば黙つてる筈はないからきつと伊達にはつきりと訊ねるよ。そうすれば、林田の嘘はすぐばれるにきまつてるじやないか」
今度は警部がきいた。
「じや君にはまだほんとに恋をしている女性の気もちが判らないんだ。さだ子のような立場に立つものは伊達を愛してはいるが、こんなことでは林田のような奴につつかれるとかえつて林田の方を信じて恋人を疑うものだぜ。伊達と林田の云うことがちがえば、伊達の方をますます怪しむのだよ、怪しんだからつてやはり惚れてはいるがね。女が『私はあなたを愛しています』ということは『私はあなたを信じています』というのとは大いに違うんだ
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