呂の中でのめば普通よりもききめが早い。それにしても十五分や二十分かからなければ、前後を忘れて眠つてしまうことにはならないと思う。だから林田は初江が風呂の中でヴェロナールをのんでから誰にも知れずに風呂場にとび込むチャンスをまつていたわけなのだ。ところで六時という時を中心にして見ると、人物の出入りはこうだ。伊達とさだ子が応接間にやつて来た。伊達を送つてさだ子と林田が外に出た。まもなく二人で戻つて来ている。この間には犯行は断じて行われていない。肝心なのはその直後だよ。小川君とひろ子が話していて、ひろ子がさだ子を追いやつた時こそまさに林田にとつてはチャンスだつたんだ。さだ子も二階に上ろうとする。林田は無論巧みに同意する。(風呂場の花嫁第四回参照)そうして二人が二階に上つて行つたとこう君らは思つている。僕もはじめはそうかと思つた。ところが事実はそうではない。二人二階に上つたことは上つた。しかし林田は、巧みにさだ子をさきへ室にやつて、自分がおくれた。この点についてはさだ子が少しも林田を疑つていないのみか、また林田が例の手を用いてさだ子を沈黙さしたのだ。さつきその点をさだ子にきくとやつと語つたがやは
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