め、かかりつけの医師がつきつきりで介抱したが、とうとうけさ落命した、というのだ。その医師が、死因に非常な疑いをもつて、すぐに警察に報告したらしいんだね。警察署からすぐに司法主任と医師が来たそうだが、これらの人々の意見も、まつたく自殺とはみないらしいので、検事局へも報告したそうだ。ひろ子嬢は、私にもすぐに来てくれというのでこれから行くつもりなんだが、君にも御同行を願おうと思つて、いそいで君の寝込みをおそつた次第さ。ともかく、行つて見なけりや判らんよ」
私は、ひろ子が無事だつたということで、ともかく一安心はしたものの、無論藤枝の好意を拒むべき理由はないので、雑誌社の方へは適当に二、三日休む旨をつたえて、すぐに出かける準備をした。
「何、そうあわてる事はないよ、朝めしでもやつてから出かけるさ、待つてるよ」
「いや、めしなんか食べてはおれん。しかし牛乳を一杯のんで行くからちよつと待つてくれ給え」
私は、早々に顔を洗つて、洋服にきかえていると、女中が牛乳をあつくしてもつてきた。
「とうとうやつたね。君がいるのにひどい事をやりやがつた。……で、誰が犯人かは判らないんだろうか」
「そりや、まだ君
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