、すぐには判らないさ」
「あらかじめ手紙をよこし、電話で報告しておいて、それから人殺しをやりやがる、ひどい奴だ」
私は牛乳をのみながらこう云つた。
「うん、そりやそうだ。たしかにあの手紙を書いた奴の仕業だとすればね」
「とすればねつたつて、ほかに怪しい奴があるのかい」
「判らんね。しかし君のようにそうすぐに事をきめちや困るよ。勿論、あの手紙のさし出し人や電話をかけた奴をたしかめる事も最も必要さ。犯罪の予告があつた後、犯罪が行われたとすれば、いちおうその犯罪の予告者を犯人と断ずるのは最も常識的だ。しかし、そりや絶対にまちがいがないとは云えないぜ」
「というとどういう意味なんだい」
しかし藤枝はこの問には答えずに、こういい出した。
「僕はあの秋川という家の中に何か余程重大な秘密がある、とにらんでいるのだ。昨日のひろ子の話の中でも脅迫状の話はなかなか面白かつたけれども、さだ子の所に手紙がきたあたりが一番、興味をひいたね。僕は父以外に対して脅迫状がきた時、何故、特に次女のさだ子に来たか、という事を考えていたんだよ、ただ意味なく偶然に次女をえらんだとしてもちよつと妙な所があるし、ことさらさだ
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