たみかけた。
「いいか。君も知つている通り、この惨劇の遠い源はあるいまわしい姦通劇なのだ。ここにある一家の主人があつて不倫にも人妻に恋をした、その人妻は不らちにもこの汚れた恋を許した。姦夫姦婦はこうやつて不義の快楽にふけつていたのだ。けれどもこの恋は恐ろしい結果を生んでしまつた。妻をとられた夫はとうとうこの関係を探知したのだ。彼は呪つた。恨んだ。しかし結局彼はどうすることも出来なかつた。この不幸な夫婦にはまもなく死という運命が来た。その時、彼らの間にはたつた一人の幼児が残つていた。彼らはおそらくこの子に向つて永遠の復讐と呪いを吹きこんだに違いない」
「そうだ。かかるが故にその子はまず第一に、相手の妻を殺し、次いで息子を殺し、更にその娘を屠り、最後にめざす相手を殺した、ということになるのだ」
「うん、それはそれでいい。しかし彼ははたして、何人に対して復讐したことになるのだろう」
「いうまでもなく、自分の亡き父の為に」
「父の為に誰をやつつけたんだ」
「無論その仇をさ、秋川一家さ」
「林田君、僕はそこにおそろしい錯誤がある[#「そこにおそろしい錯誤がある」に傍点]、というのだ。いや、おそろ
前へ
次へ
全566ページ中459ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング