あの頃になつてやつと判つた」
「ではきく、僕も云うから君も云つて見たまえ。秋川一家に対する犯人の呪いは……」
「遠き過去に因縁話をもつ宿命的な呪いだよ[#「遠き過去に因縁話をもつ宿命的な呪いだよ」に傍点]。そのはじめは姦通劇さ」
 林田はズバリと云つて藤枝の顔を見た。
 藤枝はしばらくあつけにとられたように林田の顔を見詰めた。
「そうか。君も知つていたのか。その通り、姦通劇にもとを発した恐るべき呪いだ。犯人はその呪いから秋川一家に烈しい復讐を試みたのだ」
「犯人はしかも極めて頭がよく働いた。藤枝君、われわれが出会つた人間の中で今度の犯人位悪魔のような働きのある奴に出くわしたことはない」
「その点は僕も同感だ。全く! しかしだ。かの悪魔の如き天才にもかかわらず、犯人はスタートからして全く錯誤に陷つているのだ[#「犯人はスタートからして全く錯誤に陷つているのだ」に傍点]。林田君、君にはその点に気がついているのかい」
 藤枝と林田は今や心の中で鎬《しのぎ》を削つているのだろう。二人は殆どにらみ合わんばかりである。今度は林田が驚愕の色を表わした。
 藤枝はどうだ、判つたか、というような調子でた
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