」
伊達正男は、ほんとうに困つたという顔をしながら語りはじめた。
「ゆうべ警部さんに申し上げたことは大抵まちがいはないのです。ただ今おつしやつた母の遺書についての点だけを申し上げなかつたのですが、こうなればもうすべてをかくさず申し上げてしまうつもりです。昨日、僕が秋川家に参つた理由は全くゆうべ申し上げた通り、さだ子さんに会いに行つたのです。いつものように裏の階段を通つて二階に上ればこんな間違いはなかつたのですが、ゆうべも申し上げた通りもしひろ子さんに会つたりしてはいやだと思つたのでわざと庭からまわつたのです。庭の花壇のところからさだ子さんの窓が見えるのでそこから声をかけてさだ子を呼ぶことにきめたのであります。
「それで花壇の所に行つて家の方を見ますと、窓にさだ子さんの姿は見えません。ふと下のピヤノの部屋を見ますと誰か人かげがします。ことによるとさだ子さんではないか、と思つて私はそつと窓の方に歩いてまいりました。まえにも一度さだ子さんがピヤノの部屋にいるのに出会つたこともあるのです。窓の外までまいりましたが中がよく見えませぬ。おぼえていらつしやるでしようが、昨日僕があの家に行つた頃はも
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