ころが二十五日の午後になつて、また秋川家に電話をかけて、初江という令嬢を呼出している。われわれが君を責めることができるのはこの点なんだ。これについてはおそらく君も一言もあるまい。けれど自分が犯人だなんてそんな馬鹿な自白に僕は乗るわけには行かん。
「で、右の場合に、どうして君が電話をかけたか。ここをはつきりききたいんだが、いずれも、ある男から電話がかかつて来たんだろう? そうして君はその命令に従つていたんだね」
 千代子は再びうなずいた。彼女は藤枝を一体何人と思つているかしらぬが、ともかく、非常におどろいているらしい。
「ところで、では、何故君が秋川一家をそれほど呪つているか、という問題だ。事は今から二十年前に遡らなければならん」
 藤枝はここでちよつとだまつてしばらく何か考えているようであつた。
「君の姉夫婦、すなわち伊達捷平夫婦と、秋川駿三夫婦が今から二十年前に、山口県の今泉という町に住んでいた頃、両家の間にあるいまわしい関係が取りむすばれた。一言で云えば秋川駿三は、不らちにも先輩であり親友である伊達捷平の妻をぬすんだのだ。当時自分の妻の不義を知つていた捷平は重病のため、目の前に不義
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