す」
4
「成程、無理はないな」
と藤枝がつぶやいた。
「ところがそれならばいつもの通り裏門からはいつて裏口から上り、二階のさだ子の部屋に行けばいいわけなのです。何故彼は庭へまわつたか、しかも雨の中をね。私はここが怪しいとにらんだから早速この点を突つこみました。伊達の弁解によれば、左様な次第で行つたのだから、なるべくさだ子以外の者には会いたくない。殊にひろ子には顔を合わせたくない。二階に行けばきつとひろ子に偶然会うことになるから、なるべくならば庭からさだ子の部屋に声をかけたかつたとこういうのです。これからが肝心のところで面白いのですよ。伊達の供述に従うと、彼は裏門から庭に廻つた。そうしてさだ子の部屋のすぐ下に来て上を見たが、成程、すぐ下からは窓は見えない。それで、うしろむきに七、八歩あるいた、とこういうのです。その時、ふと見ると、ピヤノの部屋に人かげがする、ことによるとさだ子ではないか。さだ子なら極く都合がいい、とこう思つて彼はあの部屋に近づいたのです。部屋の中が暗いので、彼は向つて右の窓の所に行き、窓に手をかけてひよいと顔を出すと、その途端に中で、ウンという妙な声が
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