ですな」
「藤枝さん。つまらぬ理窟はやめましようよ。いくらむずかしいことを云つたつて、犯人を捕えなければ何にもならんのですからね」
これには藤枝も一言もないらしかつた。
「伊達が夕方出かけたということはたしかなのですね」
木沢氏はおずおずしながらたずねた。
「ああ、あなたは、今朝も伊達の容態をごらんになつたんださうですね」
「はあ、床にはいつていました」
「しかし起きられぬことはなかつたのでしよう」
「そりやそうです。起きようと思えば立つてあるくことが出来た筈です」
「伊達が夕方出かけたということは、本人もはじめは中々云わなかつたんですよ。雇婆さんも、伊達から口どめされたと見えて、はじめは中々口を割らなかつたんですが、とうとうこの方から落してしまつたんです。その婆さんの言によると伊達は夕方、林田さんの見まいをうけるとまもなく、にわかに床から出て制服をつけたがちよつと出て来るからと婆さんに云いおいて、家を出たというのです。それから十二、三分ほどたつと、顔色をかえて戻つて来たが、急に婆さんをよんで、誰が来ても何も云つてはいかん、と云つたというのですよ。今、伊達に婆さんを対決させて取り調
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