いつて来て警部の耳に何かささやいた。
 警部の顔色にはちよつと驚きの表情が現れたが、
「すぐ署の方に引つぱつてくれ給え」
 と云つて刑事をまた室から送り出してしまつた。
 警部の言葉に従つてわれわれは一応警察に行くことになつた。警部はああ云つたものの勿論藤枝や林田を疑つているわけではないので、一足さきにひろ子とさだ子を連れて帰ることになり、あとから両探偵、木沢氏及び私に出頭するように命じた。
 秋川家には、野原医師その他刑事が残り判事検事の一行を待つことになつた。
「どうもひどく立腹されちやつて閉口したよ」
 と藤枝。
「うん全く。まあ参考人となつて警察へよばれる経験もやつて見るさ」
 と林田は笑いながらいう。
「一体誰を警察に引張つたか君知つてるかい」
「うん、僕はさつきちらときいた。伊達だよ。刑事が女中の久や[#「や」に傍点]を訊問したら、さつき夕方伊達らしい男がいそいで台所の窓の外を通つた、というんだ。どうもあの男が夕方ひそかに来たらしい」
「何? 伊達?」
 藤枝は思わず叫んだが、しばらくして何を思いついたか、
「うん、なるほど」
 と一言云つた。
 伊達が、牛込警察署に着いた
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