11[#「11」は縦中横]
私は「第二の悲劇」という章で、このピヤノの部屋の図取りを読者に御紹介しておいたのであるが、もう一度記憶をあらたにする為にはつきり云つておく。
ドアからはいつて左手の壁に沿うてかなり大きなピヤノが置いてあり、右手の壁には西洋画がかけてある。ドアに沿うた壁の下の方にはストーブが冬中おかれてあるものと見え、そこがくり抜いてあるが、今は洋風の衝立でかくしてある。そのすぐ上に四尺に三尺位の鏡が壁にはめこんであつた。
われわれがはいつて来たドアと反対の側には三つの大きな窓があつてその向うが庭である。庭に面した窓と右手の洋画のかかつている壁と直角に交つている隅に立派なヴィクトローラが一台おいてある。
秋川駿三の死体は、さきにも云つた通り、ドアに沿うた壁、すなわちストーブの前にある洋画の衝立を足の方にして、仰向けに大の字なりに仆れていた。両手は、苦しそうに、堅く握つて、顔面は度々書いたようにひつつり歪んでいる。血も何も出ておらず、一見、外傷のようなものは少しも見えない。
「林田がすぐ来る」
と私が伝えたのに対して、藤枝はまたおどろいたような様子を示したが
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