は、戸口の壁に沿うた鏡面のその下にある衝立にむけて大の字にひらかれている。目でもまわしたのか、と思つて近よつたが私は思わず顔をそむけてしまつた。
恐ろしい顔。物凄い顔。この時の駿三の顔ほどものすごい顔が世にまたとあろうか。
10[#「10」は縦中横]
両眼は開いたまま眼球がとび出したようになつている。眉と目のあたりが、妙にゆがんで引きつつている。もしこれが顔だと云えばそれは人間の顔ではない。鬼の顔だ。魔の顔だ。私は一見した時すでに駿三は死んでいる、と感じた。
私がしかしこの時、恐怖とおどろきでしばらく物も云えなかつたのは、一つには藤枝の態度が余りにあわてていたからである。ひきつづく秋川邸の怪事件でも、彼がこの時表わした位あわてた様子を見たことはない。いな、今までいろんな事件にかかりあつている間、彼がこんなに周章狼狽したところを見たことがない。
彼は、私と共に室にとびこむやいなや、
「あつ、こりや……」
とおどろきの声を発して駿三の死体にかけよつた。
じつとその恐ろしい顔を見ていたが、
「木沢さん、大変です、大変です」
と叫んで木沢氏をしきりに呼んだ。
さ
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