だ。木沢さん、出ましよう」
藤枝が第一にドアをあけた。三人は一度に廊下に出た。
出るとすぐ向いの書斎のドアを藤枝が叩いたが返事がない。なんと思つたか藤枝はいきなり把手に手をかけてグイと押してあけて見たが誰もおらぬと見えてすぐしめてしまつた。
「ここじやないな」
藤枝はちよつと途方にくれた様子をした。
木沢氏がこの時、廊下を歩いて行つて左側のひろ子のへやの戸を叩いた。
「ひろ子さん、ちよつと失礼します。あのお父様を御存じありませんか」
中からひろ子が美しい姿を現したが私は、彼女がかなりいたましくやつれているのを見ると、思わずかけよつた。
「あなたにはいろいろ申し上げることがあります。しかし今うけたまわりたいのは、もしやこの廊下でお父様におあいになりはしなかつたかということです」
ひろ子は何のことやら判らないのでひどく驚いたらしいが、
「いえ、今木沢先生がいらつしやるまでずつとこの部屋におりましたので……」
ちようどこの時、さだ子の部屋の戸があいて、さだ子が顔を出した。外の物音で、おどろいたものであろう。
二人の令嬢達とわれわれ三人はちよつとの間、廊下で話したが誰も駿三のよ
前へ
次へ
全566ページ中411ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング