言も発しない。自信に富んだ藤枝の前で、一体どう答えたらよいのか迷つているように見える。二十日の夜藤枝が駿三にせまつた時とは大分事情をことにしている。藤枝は今や秋川家の秘密を探り出してしまつたのである。少くも探り出したと称している。
「秋川さん、どうか周囲の事情をよく考えて下さい。警察ではひろ子さんを疑つているようです。令嬢方のことをお考えになつてどうしてもそれを云つて頂かぬと困ると思うのですが」
「判りました」
 はじめて駿三が力なく云つた。
「しかし私にもほんとうは誰が送つて来たかわからないのですが」
「ではどうでしよう。こう考えて見ましよう。あなたと私二人だけが知つている秘密から察すれば、あなたにああいう脅迫状を送りそうな人間は、伊達捷平すなわち正男の父の兄弟から、でなければその夫人かよ子の兄弟たちだということになります[#「伊達捷平すなわち正男の父の兄弟から、でなければその夫人かよ子の兄弟たちだということになります」に傍点]」
「…………」
 駿三は無言だつたが、仕方がないというようすで首をたてにふつた。
「ところが、捷平には御承知の通り、まるで親類というものがなかつた。して見る
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