うさ。時に彼は病気でねているぜ」
「え? 誰が?」
「伊達がさ」
「いつから?」
「君が出発した翌日からだ。つまり二十七日から」
「ふうん、そうしてそれからずつと」
「うん、今日もまだ床についているそうだ」
「成程、これは思いがけないことだつた。しかし外のことは大抵僕の想像した通りだ」
「ところが、君は、ひろ子がいつまで疑われていると思う? たつた今、嫌疑がはれて帰宅したそうだよ」
 私の言葉をきくと藤枝は何故か緊張した顔になつた。
「君はどうしてそれを知つてるんだ? 秋川邸へ行つて来たのかい」
「いや、ちがう。もうちよつと前林田からしらせてくれた。林田は警察できいたそうだ」
「何だ君、君は自分の情緒をあの男にしやべつたんだな」
 藤枝はこういうとニヤリと冷やかすように私を見た。私も、彼がこの時、恋とか愛とかいう言葉の代りに情緒という妙な字を使用したのを多少おかしく感じてニヤリと笑つてやつた。
「もう四時すぎだね。よしこれからすぐ秋川家に行くんだ。旅の報告をせにやならん」
「じや車を云おうじやないか」
 十分程たつてからわれわれ二人は車上の人となつていた。
 この日は小雨が朝から降りつ
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