玄関を上るか上らぬところへ電話のベル。あわてて出て見ると、はつきりした藤枝の声がする。
「小川か。今帰つた。すぐ事務所に来てくれ」
4
ひろ子の顔も見たいが、長途の旅――藤枝は旅先を私に告げなかつたけれども、多分遠い所まで行つたことと思われる――から今着いたという彼が、しかもすぐ来てくれというのだから、すげなくこれを断るわけにも行かない。私はすぐにオフィスにかけつけた。
「やあ早速ありがとう。今着いたばかりなんだ」
成程、着いたばかりらしく、室の中にはスーツケースがおいてあるし、旅に出た時と同じ軽装だが、二、三日顔の手入れをしないと見えて、無精ひげが大分のびている。
「一体君、どこをどうしていたんだい。何とか便りをしてくれなくちや、全くたよりなかつた[#「全くたよりなかつた」に傍点]よ」
「うん、失敬、失敬、時に留守中かわりはなかつたかい」
「ああ、まあね。大して事件はない。君の電報通りひろ子のことはほつておいたが、君も新聞で読んだろうが、彼女は毎日よばれて可哀そうだつたよ」
「そうか。まあうらめしそうに云い給うな。伊達はそれじや嫌疑がはれたわけだね」
「まあそ
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