家から戻つたところです。今日、初江さんの埋葬があつたものだからね」
「そうでしたか、僕も行けばよかつた」
「藤枝君は留守のようですが、どこに行つたんです?」
「藤枝の旅行を知つてるんですか」
「昨日用があつて電話をかけたら留守だつて云うことだつたんでね」
「どこへ行つたか、あいかわらず例の調子でぶらりと出て行つちやつたんですが」
 私は、藤枝に、特に自分の行動を秘密にしてくれとは云われていなかつたけれど、これより詳しいことを云う必要はないと思つたからこう答えた。
「ねえ林田さん、今日来たのは実はあなたに感謝する為なのですよ」
「とおつしやるのは?」
「あの夕刊に出ていた記事です。あなたはひろ子を犯人ときめるのは早計だと云われた筈です。たしかに……」
「ああ、あれですか」
 林田はしばらく私をじつと見ていたが、やがて、
「ありやね、あんまり記者にうるさくつけまわされて仕方がないのでつい口をすべらしてしまつたんですがね。僕も藤枝君のように、どつかに逃げればよかつた」
「藤枝も記者をまくつもりで旅に出たんでしよう。僕にも行先を告げずに行つてしまいましたから……ねえ林田さん、あなたはひろ子の為
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