もう彼女の共犯者というものは考えられない。僕はかつて君に伊達がひろ子と妥協し得ることを述べた。けれどもあれから度々の観察でそれは不可能だということがはつきりと判つた。二十一日の朝、僕らは警察に行つた後、秋川家を訪問した。その時、ひろ子に伊達の事を父によくきいてくれと僕が頼んだ事を君はおぼえているだろう。実はあの時まではまだ多少の疑いがあつたので、僕はひろ子を全く信用しているらしい風をしつつも一方で、何気なく『勿論私自身の方でも伊達という人の素性を調べ中だ』ということを云つて鋭く彼女の表情に注意していたんだ。もし彼女が少しでも伊達と妥協しているとすれば、ああいう問題の際に、ちよつとでも顔色をかえて尻尾を出すものだが、そのようすはすこしもなかつた。だから、彼女に男の共犯者があるとするのは当らない。しかして第二の事件と第一のそれと全く別にした推理の上に立つひろ子犯人説には、僕はまずこの点で賛成できないのさ」
「うん、うん、それから次は」
「第二はこれは、さつきひろ子の、さだ子伊達共犯説に対して云つたのと同じことで、徳子にのませた昇汞を、ひろ子は一体どうして手に入れたかという問題だ。成程ひろ子
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