。それでとうとう堪りかねて今日まず僕の所に来て二人のことを訴え、しかる後、自身警察に出頭してさだ子と伊達を訴えたとこういうわけなのだ。警部は最後にこういつている。ひろ子のような智慧のある少女にでつくわしたことはまだかつて一度もない。実におそるべき天才だとね」
藤枝はいい終ると、一向感情を動かしたようすもなくすまして天井に向つてプカリと煙を吐いた。
「ふうん」
私はさすが警部というものは頭がいいものだとしばらくは感心していたが、ひろ子が犯人だなんてどうして信じられるものか。
「どうだね、小川、[#「小川、」は底本では「小川」]警部の論理もひろ子のテオリー同様中々頭がいいじやないか」
「うん、しかし腑におちない点があるな」
「そうかね。じや云つて見給え」
「第一、母を殺す原因が薄弱じやないか。成程、二人に嫌疑をかけるのもよかろう。しかし恨みもない母を殺すとは」
「さあ、その点は僕も念のために警部にきいて見たんだ。すると警部の曰くさ。確証はないが、あるいは母がひろ子の性質か目的をみぬいたのじやないか、というんだ。つまりひろ子にとつて、目的をとげるのに一番邪魔でうるさかつたのが実は母だつた
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