つた」
「もし初江がもう出ていたらどうするつもりだつたろう」
「出ていれば無論手を下しようがないさ。彼女は無論またのチャンスを待つばかりだ。ところが、うまく初江が風呂につかつている所にぶつかつた。彼女は何気なくそのそばに寄つて、相手の隙をうかがつてジョセフ・スミスのまねをすればよかつたわけだ。ただ彼女の、フェータルな失策は――警部の説に従えば『風呂場の花嫁』という言葉を思わず洩らしたことである。ジョセフ・スミスの犯罪を余りはつきりまねたためついうかとそういういいあらわしをしてしまつたのだろう。通常のお嬢さんの思いつく言葉ではないからね[#「からね」は底本では「からね。」]」
「しかるに、第一、第三の犯行の間に意外にも早川辰吉の犯罪が加わつた。脅迫状をあらかじめ出しておいたので、当局は同一犯人と思う。そうすると第二の事件でひろ子自身のアリバイが完全に立つているため、事は彼女の思いもうけていなかつた位、安全にはこんでしまつたのだ。しかし一方彼女は焦慮した。それは、さだ子、伊達の二人にはつきりした嫌疑がかからないということだ。目的のなかばは成就しても、この憎い二人が捕まらなければ何にもならぬ
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