明しているわけさ」
「でも君は林田がさだ子に好意をもつておらんということをどうして知つたんだい。林田が何か君に喋舌つたのか」
「どうして、そんなことを競争者たる僕にもらすものか、僕だつて同じことだ。ひろ子はすつかり僕を信じているし、林田もそう思つてるらしいが、僕が心の中で、どの程度に彼女を……いや僕のことより林田の話だがね。彼がさだ子に大して親切でないことの一つの証拠を挙げて見ようか」
 藤枝はここでちよつと口をつぐんで私を見た。
「四月二十一日の午前、すなわち、あの第二の惨劇のあつた翌日、僕らが秋川邸に行つた時のことを思い出して見給え。僕らは笹田執事にあつた後すぐひろ子に会つた筈だ。その時彼女はいきなり『昨夜犯人が捕まつたそうでございますね』ときいた。僕がどうしてそれを知つているか、と反問すると『さつき林田先生がおいでになつた時、そんな事を承わりました』と答えた事実を君はおぼえているだろう。ところですぐその後でさだ子に会つた。僕は林田が無論彼女に早川のことを喋舌つてると思つたから『実は私は今警察に寄つて来たのです。昨夜の事件の犯人らしい男が捕まつたというのでね……あなた林田君にききま
前へ 次へ
全566ページ中366ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング