せんでしたか』と訊ねた。するとさだ子は意外にも『いえ、ちよつとさきに林田さまにお目にかかりましたけれどもその話は……』と答えたぜ。ねえ君、さだ子はあの時伊達が警察に連れて行かれたときいて非常に心配していた筈なのだ。もし林田に好意があれば『実は昨夜の犯人らしい者が捕まつたから安心していいだろう』と、気やすめにでも云つたらよさそうなものじやないか。林田はひろ子には云つた。しかも肝心のさだ子には故意かどうかともかく、語つていない。これは一体どう考えるべきだろうね」
「成程、して見ると林田はさだ子を疑つているのかしら……」
「疑つているにしてもその位のことは云つてもよさそうだがね。ともかく林田がさだ子をかばつたとは思えない。……そうそう、そう云えばあの時僕が心配しているさだ子に『たとえばその後伊達君が邸内をうろうろしているのを誰かに見つかつたなんていうことはないのでしよう』と云つたら『そ、それは勿論でございます』と答えたが、あの時のさだ子の不思議な表情に気がつかなかつたかい。この点だよ、重大なところは」
 彼はこう云つたまま沈黙してしまつた。
 それからの彼はプカリプカリと煙草を吐くばかりで、
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