をひろ子はどう説明するかしら。勿論、この点が説明出来ぬからと云つて彼女のテオリー全部の価値を認めないわけではないがな。第二に佐田やす子が殺された理由については、僕も全くひろ子の説に同感だよ。感服の外はない。しかし、犯人すなわち伊達又はさだ子が、如何なる方法でそれまでやす子を沈黙させていたか、この点が明らかでない」
「そりや買収したんだろうよ」
「不可能だ。君はあの位の若い女の心理を知らぬと見えるね。ひろ子もそう思つているらしいけれども、しかして恐らくは犯人自身もやす子の心理を誤算したのだ。ともかく買収ではない。この方法は、説明出来ぬというよりは、むしろ不可能なことに属すると思う」
「では伊達が脅迫して沈黙させたのではないかしら?」
「脅迫? うん、君の考えは多少いい。しかしね、伊達が佐田やす子を脅かす程の力をもつていると君は信ずるのかい」
 藤枝はエーアシップの煙を室一杯に漂わすのだつた。思えば彼も人がわるい。私にさんざんしやべらせておいて自分のシーオリーを少しも云わないのだから。
 私はこの時ふと心に浮んだことがあつたので口を開いた。
「昨日君が妙なことを思い出さぬ[#「妙なことを思
前へ 次へ
全566ページ中364ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング