にさだ子に[#「さだ子に」に傍点]とひとこと申しました。これはこの前も申上げた通り、母はとり返しがつかなくなつてから自分のかたきを知つたのでございましよう。あの日西郷へ薬をとりにまいりましたのはやすや[#「やすや」に傍点]ですが、やすや[#「やすや」に傍点]が帰つてから薬はさだ子が受け取り、それから夜まで薬はさだ子の部屋にあつたのです。そしてさだ子の部屋には、さだ子は勿論、伊達さんもおりましたことは、いつか私が申し上げた通りでございます」
ひろ子はここまで語つて、自分の言葉が相手にどんな効果を与えたかと、しばらく観察しているようであつた。
「次に二十日の夜の事件でございます。先生は如何お考えか存じませんが、十七日の事件の犯人と二十日の事件の犯人とが、全く別だというのは、私には考えられませぬ。私は断じて同一人であると存じます」
6
「ほほう、それはどういうわけですか」
藤枝が、非常に興味をもつた調子で訊ねた。
「やすや[#「やすや」に傍点]が殺されたからでございます。早川辰吉がやすや[#「やすや」に傍点]を殺したとすれば余りに偶然すぎます。やすや[#「やすや」に傍点]
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