くざい》ということについてうけたまわりたいのでございますが……ここに私がたしかに殺人犯人と信ずる人がいると致します。それで私がその人を訴えた結果、万一後にその人が人殺しでないと明らかになつた場合、私は誣告の責任を負わなければならないでございましようか」
「そうは云えませんな。あなたが故意にその人を陷れたのでなければ。そしてあなたが、どうしてもその人が犯人であると考えるべき理由を十分もつていらつしやればそれは誣告とは云えないでしよう。たとえその人が後に無罪と判つても」
 ひろ子は暫く黙つた。彼女はこの沈黙の間に何か余程の決心をしたらしい。
「先生、では私は、私の家におこつた数々の殺人事件の犯人として、妹秋川さだ子と、その婚約者伊達正男を訴えたいと存じます」
「さだ子さんと伊達?」
 藤枝が愕然として云つた。
「はい、そうして過去のことばかりでなく、この二人が将来においても殺人事件をおこすことの出来る人だということを断言致します。先生、私の生命も脅かされているのでございます」
 今までしつかりしていたひろ子の面上にはこの時、はじめてほんとうに恐怖の色がさつと浮んだ。
「さだ子さんと伊達です
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