ようどこの一時間の間に何者かに殺されたことになるね。無論あれは他殺だが。して見ると、家の中で一体誰が彼女を殺すチャンスをもつていただろうな」
「まず第一は君の云つたように主人だね」
「そうだ。第一が主人だ。それから?」
 私は暫く考えて見たがどうもはつきり判らない。
「さだ子はどうだい? 小川、君どう思う?」
「うん、さだ子はずつと二階の部屋にいた筈だよ。初めは伊達と二人、あとでは林田と二人でね」
「重大なのはここだよ。彼女が伊達と二人でいた間に初江が殺されたか、彼女が林田と二人でいた間に初江が殺されたか。この一点は実にこの事件の中心なんだぜ。ところで彼女はいずれの場合にもずつと部屋にいたと云つているし、相手の伊達、林田もこれを認めている。ただこの中、伊達の言葉は決してあてにならん。さだ子と一番妥協しやすい立場にいる人間だからな。林田は自分でも、ずつとさだ子に警察の話をきいていたと云つているし、さだ子とは容易に妥協しそうもない男だから信じていいかも知れない」
 彼はこう云つたが、この時、急に緊張した顔をした。
「しかし君、さだ子を林田が調べていたということについて何か妙なことを思い出し
前へ 次へ
全566ページ中347ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング