はしないかね?」
「妙なこと?」
「うん、そうだよ」
4
私には藤枝のいう意味が判らなかつた。彼は私の当惑した顔を暫く黙つて見ていたが、やがて又つづけた。
「君には何も思い当ることがないらしいね。いや、判らなければそれでいいんだよ。そこで、駿三、さだ子、伊達の行動がまあはつきりしなかつたとして、ひろ子はどうかね」
「ひろ子はずつと僕と一緒にいたよ」
「初江が去つてから君とずつと話をしていたようだね。従つて僕は君を疑い得ないと同様に彼女を疑う事が出来ない。ただ最後の一番重要な所を除けばだね」
「というのは?」
「ごはんの支度を見てまいりましよう、と君に彼女が云つて庭から去つて、それから君が彼女の悲鳴をきくまでに、僕のきいた所によれば少くも二、三分のあいだがあつた筈だ。彼女は台所に行つたと云つている。成程これはほんとだろう。それから風呂場に行つている。しかし彼女が何分台所にいたかということは誰にも証明が出来ない。ともかく、彼女が一旦台所に現れ、すぐ風呂場にいき、いい気もちで寝風呂にはいつている妹のそばに何気なく近づき、スミスのような真似をする機会はたしかに恵まれていた筈な
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