じ犯人説は、この場合第一に心理上かなり困難な問題にぶつかるんだ」
 彼はとうとう我慢が出来なくなつたと見えて、一本のエーアシップを口にくわえた。
「じや一体われわれは誰を疑えばいいのかしら」
「その点について一つ考えて見ようじやないか。君のさつきの説明は、君が如何に正確に事件を記憶しているかを証明するもので、僕は大いに感謝しているんだ。それをたどつて問題をおつて見よう。今日、午前君は秋川邸に行つた。この時、あの家にいた人間は、主人、ひろ子、さだ子、初江、笹田執事、それから、二人の女中だ。それに一人木沢氏が来ている。木沢氏が君に云つた言葉は、主人が又病気であること、及び初江が胃を悪くしていたということだが、この二つはかなり重大なことだからおぼえていてくれ給え。さて、木沢氏はそう云つて帰つて行つた。君、林田、ひろ子、初江が出かけ、午後四時半頃に帰つて来た筈だね。この時笹田執事は用事で出かけてしまつた。君、林田、ひろ子、さだ子、初江が応接間で話している処へ、今まで主人の所へ来ていた木沢氏がやつて来て、初江に散薬を渡した筈だつたんだね。そして五時半頃にのめと云つて去つた。この事実は特に注意すべ
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