、警部は、藤枝とも林田とも余り口をきかなかつた。藤枝も林田も今日は余り語らない。
八時すぎ、藤枝は私をかたわらに招いて、帰ろうというようすをした。私は直ぐ彼のあとに従つた。
玄関を出る時、私は藤枝と高橋警部の会話をちらと耳に挿んだ。不機嫌な二人はこんなことを云い合つていた。
「高橋さん、あなたはまだ、早川辰吉を疑いますか」
「無論です。彼の無罪が明らかにならぬうちは」
「あなたは初江の死が過失死だと思うのですか」
「藤枝さん、必ずしもそうではありません。しかし私は、第二の事件と今度の事件が必ず同一人のやつたものだと思う必要はないという意見です」
ひろ子の推理
1
秋川邸を出て、自動車に乗り自宅に着くまで藤枝は一言も発しなかつた。私は、急に彼が活動をはじめたため、せつかくなおりかかつていた彼の身体の工合が、また悪くなつたのじやないかと心配しながら藤枝の家まで一緒について行つた。
「暫くねていたので妙に疲れて困るよ」
「うん、身体を悪くしちや大変だ。かまわんから床にはいり給え」
「失敬して横になるよ」
彼は遠慮なく床にはいつたがかたわらに坐している私に語りは
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