駿三はこの日気もちが悪く、午後は木沢氏の処方にかかる鎮静剤の効果で、ずつと床の中にいて、ひろ子によび起されるまで何も知らなかつたと述べた。
 伊達は一旦帰宅して用事をすませ――用事というのは二、三本手紙を書く為だと答えた――それから夕方六時半頃、裏口からはいつてすぐ二階に上つて林田、さだ子の二人と共にさだ子の部屋にいたと語つた。
 二人の女中しまや[#「しまや」に傍点]と久や[#「や」に傍点]は当時台所にいたと一致して答えた。
 藤枝はこんな場合、必ず何か口を出して問を発するのだけれども、今日は病気の為かすつかり元気を失つてしまつてまるで黙りこんでいる。
 林田も、今日は私と共に警部に一応参考人として取り調べられる立場にいるので、これも多くを他の者に対してはきかなかつた。
 最後に、警部は二人の医師とひそひそとまた何か相談していたようだつたが、刑事が電話をかけに行つたようす、その緊張振りから察するに、事件は遂に検事局に報告されたらしい。高橋警部は、医師の説を詳しくきいた結果、他殺の嫌疑濃厚と見たのであろう。
 変死体がそのまま現場になかつたのがすつかり警部の機嫌を悪くしてしまつたらしく
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