今警察からすぐここに来たんだそうでございます。それで用があるから一旦うちに戻つて、また来るというのでちよつとごあいさつにまいつたので」
 さだ子がこう説明した。
「おや、もうお帰りですか。じや、またあとでお話を承りましよう、送りましよう」
「いえ、もうどうかおかまいなく」
「まあいいですよ」
 林田もわれわれの沈黙にはいささか閉口していたと見えてさだ子と二人で伊達を送り出て行つた。やはり伊達はいつものように裏口から来たらしく、玄関の方へ行かずに反対に裏口の方へ向つて行く足音がきこえる。
「小川さん、ここの家のものが二派に分れているとお思いになりません?」
「というのは?」
「さだ子と伊達さんは全く林田先生を信じて私を信じていないのです。それから私は藤枝先生を信じてさだ子と伊達さんを信じないのです」
「初江さんはどうです?」
「さあ、あれはどつちということはないでしようが……今日だつて藤枝先生が見えていればさつきの電話の話をしたと思いますわ」
 私も全く同感である。
 伊達を送り出したさだ子と林田は再び応接間に戻つて来た。
「あなた、詳しく警察のようすを伊達君にききましたか」と林田。

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