彼はかくそうとしたか、これが謎だよ」
「ふうん」
 私は今更感心して考えこんでしまつた。
「うん、素性と云えば、早川辰吉の性質がよく判つて来たよ。これはさつき警察から電話でしらせてくれたのだがね、牛込署の刑事が二十一日の夜、大阪に立つて、辰吉の前の情婦の岡田かつに当つて来たんだ。その結果、妙な事が知れたよ。岡田かつは辰吉を嫌つて別れたそうじやないんだそうだ。ただ同居に堪えられなくなつたんだね。つまり一口に云うと早川辰吉という男は変態性慾患者なのだ、すきな女を肉体的に苦しめるのがむしようにうれしいんだ。不幸にも、かつがマゾヒストでなかつたので別れちまつたんだな。そうして佐田やす子の場合もそうだつたらしいんだ。つまり、やす子も辰吉をすいてはいるのだが、どうも一緒におられなくなつたのだろう」

      11[#「11」は縦中横]

「そうすると、どういう事になるんだい」
「彼に惨虐性がある、ということが判つた事は、彼の為には決して利益ではない。現に警察では、この点で二十日の夜のあの殺人事件について早川をますます疑つているよ。駿太郎の死にざまを思い出して見たまえ」
 藤枝は暫く何か考えてい
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