すると、駿三の云うことはうそじやないんだね」
「そうさ。ところで君はそれで満足したかね」
「そうだね。話がまあよくわかつたよ」
「そうかね。よく判つたかい。何かおかしな所に気がつかないかい」
藤枝は、ちよいとからかうような表情をした。
「ねえ小川。成程、駿三のいう所はよく判つている。しかし、それならだ。何故今まではつきりとその事をわれわれに話さなかつたのだろう。僕が、伊達正男の素性を怪しんでいたことは、あの二十日の夜にはつきり口に出すまでにだつて判つている筈だ。況んや、二十日のあの時以後はなおはつきりと知れている筈ではないか。のみならず、駿三は僕ばかりにではない、ひろ子達にも伊達の素性をはつきりといつていないぜ」
「彼の弁解によれば、恩返しをしているということは、こつちから恩を売ることになるから……」
「君はそんな弁解を信じているのか。冗談ではないよ。駿三はできるだけ伊達の素性をかくしていたかつたのだ」
「何故?」
「そこだ。何故彼がそれをかくしているか[#「何故彼がそれをかくしているか」に傍点]。せつぱつまつて今日になつてしやべるまで悪いことでもないのに――否、立派な美事をどうして
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