つた。
令嬢達が出かけてしまつたので、私はどうしようか、と考えていると、突然、来合わせていた木沢氏が私のいる応接間にやつて来た。
「いや、先日は失礼しました。もう御主人も大変いいようです。もうおきていられますよ。今ここへ来てあなたに何かお話があるそうですから、ちよつとお待ち下さるようにとの事です。私は今日は失礼します」
木沢医師と入れちがいに駿三が現れた。
「昨日はどうも御厄介でした」
「とんでもないことで。とんだ失敗をしましてね」
「しかし、今日はあなたの御注意で、郊外に出て行きましたから皆よろこんでいることと存じます。藤枝先生は如何ですか」
「もう大分いいんですよ。あしたかあさつてはおきて来るでしよう」
「時に、ちよつと私から申し上げたいことがあります。実は、先日からお話しようと思つていたのですが……」
「はあ」
「伊達正男の事ですがね、藤枝先生は大層あの男のことを気にしていられるようで、ひろ子にも、しきりに御注意なされたそうですが、あれは決して怪しいものではないのですよ。私とは親戚の関係は全くありません。ただあれは私の恩人の子なんです。私が若い時に大変世話になつた人があるので
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