け陽気にした方がいいというのでね」
 私は一生懸命になつて藤枝の名を呪文のやうに口に出しながら令嬢をくどきおとしにかかつた。
 果して藤枝という名は偉大なる効果をもたらした。ひろ子もかなり心が動いたらしい。こんな陰気なところに終日いることは自分達も相当つらいのだろう。
「どうです。ドライヴでもいいし芝居でもいいし、出かけて見ませんか。妹さん方をおさそいになつてはどうです」
「じや、相談してまいりますから、ちよつとお待ち遊ばして」
 ひろ子は応接間を出て行つた。

      6

 まもなく彼女は初江と一緒に室にはいつて来た。
「今のお話、妹にも話しましたら大変よろこんでおります。是非どこかにお伴したいつて申しておりますのよ。さだ子にも話しましたが、さだ子は今日もう少したつと伊達さんが見えるので出られないつていうことでございます。出られない人は仕方がございませんわね」
「ああそうそう、伊達さんは今日も警察によばれているんですつてね」
「はい。何でもそのちよつと前に来るんでございますつて。それで、私と初江とがお伴いたしますわ。それから女中を一人つれて行つてやりたいと存じますのですがよろし
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