たり誰かにあつてしまいました。それはさだ子でございました。
『さださん、どうしたの? 今頃』
とききましたが、妹は青い顔をしたまま何も答えないのです。私は思い切つて、
『さださん、あんた、お父様のことで何か心配していらつしやるのではない?』
ときいて見ました。
そうすると、妹は黙つてうなずくのです。
『じや、あんたも、あの手紙に気がついているの?』
とはつきりきいて見ますと、妹は小さな声で申しました。
『お姉様、どうしてあの手紙の事、知つてらつしやるの?』
『だつて私、前からお父様の所にくる手紙に気をつけてるんですもの』
『え? お父様のところにも来たの?』
妹は驚いて思わず大きな声を出してしまいました。驚いたのは妹ばかりではございませぬ。私もおどろきました。
『さださん、あなた、誰の所にきた手紙の事を云つてるのよ』
私は思わず暗い廊下で、妹の手をかたく握りしめておりました。
『お姉様、私さつきへんな手紙を貰つたんですの。誰から来たのだか判りませんけれど……』
『じや、封じ目に三角形の印が押してあるのじやない?』
私はさえぎるようにそう云つてしまいました。妹はこわそうに声
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